2017年3月1日水曜日

体質を変えるための運動術(適当まとめ)

運動と聞くとすぐに「つらい」「きつい」というネガティブなイメージを持ってしまいますが、一口に「運動」と言っても様々な種類があり、それぞれ目的に応じた運動の実施方法というのがあります。何も「止めたくなるほど激しい運動」をしなければならないというルールがある訳ではないのです。この記事ではそのような「運動」に対する固定概念を改めるための「体質を変えるための運動術」について私なりに考えた事をまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。
(記事作成日時:2014/4/7、更新日時:2016/10/31,2017/3/1)


★無酸素運動と有酸素運動について

運動は「運動を行う際に起こる体の反応」の違いによって主に2つの種類に分けられます。それが「無酸素運動」と「有酸素運動」です。それぞれの特徴を理解する事で、その運動に対するネガティブなイメージを捨てましょう。

●無酸素運動について

まず、無酸素運動とはその文字通りの意味で「酸素を使わずに行う運動」の事です。そのため「元々体内にあるエネルギーしか使えない」という特徴があり、瞬間的には大きな力を発揮する事はできますが、全力の運動を行うとエネルギーが切れてすぐに疲れてしまいます。それが起こる仕組みとしては、まず筋肉内にある「ATP(アデノシン三リン酸)」がエネルギーとして使われますが、このATPは全力での運動では7~8秒程度で枯渇してしまいます。しかし例え全力で運動を行ったとしても、その後でしっかりと休息を摂れば枯渇したATPは回復させる事ができ、再び全力での運動が可能になります。例えば陸上競技における100m走では、準決勝や決勝を同じ日に行うという事もありますが、何故そのような事が可能なのかと言えば、そのようにATPを回復させる事ができるからです。ちなみにATPはミトコンドリア内にある酵素やエネルギーを産生・利用・消費する過程、特に「解糖系:ブドウ糖をエネルギーとして利用する仕組みの事」や「クエン酸回路:酸素を利用してエネルギーを作るための仕組みの事。TCA回路とも呼ばれる。」において作られます。

では、そのATPが枯渇した状態で運動を行うとどうなるのかというと、今度は筋肉や肝臓などにある「グリコーゲン」をエネルギーとして利用します。このグリコーゲンはいわゆる「糖」の一種であり、実は筋肉内にはエネルギーとして常に糖が蓄えられています。無酸素運動においてはそれをエネルギーに使う事で、ATPが枯渇した以降も素早く筋肉を動かす事ができます。ただしグリコーゲンの貯蔵量にも当然限界はあり、全力での運動では具体的に33秒程度しか持たないと言われています。つまりそれ以降ではグリコーゲンも枯渇してしまうため、筋肉を素早く動かす事ができなくなっていきます。また激しい運動においてグリコーゲン等を消費した際には「乳酸」や「リン酸」という疲労物質が作られ、それが溜まる事でも筋肉は次第に動かなくなっていきます。

そうして筋肉内のグリコーゲンが完全に消費されると、そのグリコーゲンを回復させるまでには最低でも3日、人によっては更に時間がかかる人もいます。ですのでその間は大きな疲労感がもたらされ、全身の筋肉の動きが鈍くなります。ただしそれはトレーニングによってある程度改善させる事ができます。例えば筋トレを行って筋肉を大きくすれば、その分だけ筋肉に蓄える事ができるグリコーゲンの量を増やす事ができますし、あえて疲労物質が溜まるようなトレーニングをする事で疲労物質の分解スピードを早める事もできます。あるいはフォームなど筋肉を動かす際の効率を練習する事で、乳酸などの疲労物質が溜まり始めるのを遅らせたりする事もできるようになります。特に、次の重要な日(試合など)までに筋肉内のグリコーゲンの貯蔵量を増やす方法を「グリコーゲンローディング(カーボローディング)」という言い方をします。前述の通りグリコーゲンは糖の一種なので、3日前から炭水化物が多めの食事を摂り、その間では全力運動は避ける等といった調整方法が知られています。

尚、筋肉内のグリコーゲンはそのような激しい運動でなくても、日常生活においてごく普通にエネルギーとして使われています。ですので、例えば糖を制限するなどのダイエットを行うと筋肉内にあるグリコーゲンが少なくなるため、筋肉の動きが鈍くなり、単純に体が重くなります。それは「激しい運動を行っていないのに体が疲れている」という事に繋がり、ますます運動習慣が疎かになってしまいます。

●有酸素運動について

一方、有酸素運動は文字通り「酸素を使いながら行う運動」の事です。有酸素運動は前述の無酸素運動のように、短時間で爆発的に大きな力を発揮する事はできませんが、酸素を使いながら脂肪を燃やし、それを少しずつエネルギーとして利用し運動を行います。ですのでそのエネルギー源さえ尽きなければ、半永久的(実際にはその前に脳や体が壊れてしまうが)に運動を続ける事ができます。ただし運動を始めたばかりの状態ではまだ脂肪は燃えておらず、まず最初に糖などが燃え始め、そこから15~20分ほど運動を続ける事でようやく脂肪は燃え始めます。よって有酸素運動を行って脂肪を燃やすためには、最低でもそれ以上の時間は運動を続けなければなりません。別の言い方をすれば、それだけの時間運動を続けるためには、「自分の今の体力に合わせて運動の強度(激しさ)を下げなければならない」という事が言えると思います。すなわちこれが有酸素運動を行って脂肪を燃やすための最低条件になる訳です。貴方の行っている有酸素運動は本当に有酸素運動になっていますか?

日本人はダイエットに対する関心が非常に高いにも関わらず、何故か「有酸素運動」と聞くと途端に「きつい」「つらい」というネガティブなイメージを持ってしまいます。そのように、そもそも有酸素運動は「長時間続ける事のできる運動」の事です。よって「きつくてつらい」時点で、実は有酸素運動にすらなっていません。だからこそいくら運動をしても脂肪が燃えないのです。例えばウォーキング一つにしても、腕の振り、歩幅の大きさ、足を踏み出す速さなどを工夫する事で、自分に合わせて運動の強度(激しさ)を変える事ができますよね。有酸素運動を行って脂肪を燃やすためにはそうして「今の自分の体力に合わせた運動」を行う事が重要であり、わざわざ自ら進んで「きつい運動」「つらい運動」「苦しい運動」「激しい運動」を行う必要は全くないのです。「有酸素運動」という言葉に対するイメージを今一度改めるべきではないでしょうか。

尚、有酸素運動を行う事では体温が上がりますが、その上がってしまった体温を下げるために大量の汗をかきます。汗には水分はもちろん様々な種類のミネラルが含まれており、それを蒸発させる事で体温が下がります。よって水分やミネラルが不足した状態で有酸素運動をしても体温が上がらず、脂肪も効率良く燃えません。すなわち有酸素運動と食事制限の併用はできないという事です。しっかり水分とミネラルが補給(毎日の食習慣)され、それを効率良く利用できるような状態(睡眠習慣の改善)で有酸素運動は行いましょう。ちなみに有酸素運動を行う習慣があると末梢にある毛細血管を増やす事ができます。これは有酸素運動ではたくさんの酸素が必要であり、全身にある様々な細胞が血液を求めるようになるからです。これが起こると血液を通して酸素だけでなく栄養も運ぶ事ができ、冷え性はもちろん肌荒れ改善などにも効果があります。


★速筋と遅筋について

無酸素運動と有酸素運動ではそれに関わる筋肉が異なります。それが「速筋」と「遅筋」です。

●筋肉の構造

まずは筋肉の構造を簡単に説明します。筋肉の最小単位は細胞(タンパク質)である「ミオシン」と「アクチン」です。このミオシンとアクチンがそれぞれ「フィラメント」というものを構成しており、アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に入り込む事で、筋肉全体を収縮させる事ができます。またそのフィラメントは「Z膜」という膜で区切られており、その一つ一つの区切りを「筋節(サルコメア)」と呼びます。その筋節がたくさん連なったのが「筋原繊維」、その筋原線維が束になったのが「筋線維(筋細胞)」、更にその筋線維が束になる事で「筋線維束」、そしてそれが束になって「筋肉」を形作っています。もちろんこれを正確に覚える必要はありません(笑)

で、その「筋線維」なのですが、実は大きく分けると2つの種類があると言われています。それが「速筋線維(速筋)」と「遅筋線維(遅筋)」です。「速筋」は瞬間的に大きな力を発揮する事のできる筋肉であり、上記で説明したような糖をエネルギーとする「無酸素運動」において主に使われます。特にこの速筋は鍛えれば鍛えるほど太くする事ができ、太くなればなるほどその筋力も大きくなります。しかしその反面やはり持久力がなく、エネルギーがすぐに切れてしまうため大きな筋力も長続きしません。一方、「遅筋」は持久的に力を発揮し続ける事ができる筋肉であり、上記のような脂肪をエネルギーとする「有酸素運動」において主に使われます。遅筋は速筋のように鍛えてもそこまで太くはできず、瞬間的に大きな力を発揮する事もできませんが、使い込む事によってその持久力を高め、運動を行う時間を伸ばす事ができます。ちなみに実際には両方の要素が混ざり合った「中間筋」もあるとされており、速筋と遅筋でそこまで厳密に役割分担をしている訳ではありません。

しかし筋肉には共通して「熱を作り出して体温を上げる」という重要な役割があり、速筋と遅筋ではその「熱を作り出す大きさと時間」が大きく異なります。まず、速筋は糖を爆発的に消費する事で、短時間しか持たない代わりに一度に大きな熱を作る事ができます。逆に遅筋は瞬間的には大きな熱を作る事ができない代わりに、長時間に渡って脂肪を燃やしてジワジワと熱を作る事ができます。よって日常生活においては「遅筋がしっかり機能しており、勝手に脂肪を燃やしてくれる」という事が非常に重要になり、これが「脂肪が燃えやすく溜まりにくい体質」と言えると思います。もちろんそれによっては「温まりやすく冷えにくい体質」にも繋がります。

●速筋と遅筋の割合は生まれながらにして決まっている

この速筋と遅筋の「元々の割合」は「生まれながらにして決まっている(そのほとんどは両親から受け継がれる)」という事が分かっています。生まれながらにして決まっているという事は、どんなに筋トレをしようが長時間走ろうが、その割合を変える事はできないという事です。特に速筋と遅筋の割合は、例えば陸上競技や水泳競技などタイムを競うようなスポーツでは顕著に現れるため、実は生まれた瞬間に「スポーツにおける向き不向き」が決まってしまうという事が言えます。それを踏まえると「自分はスポーツに向いていない」と考えてしまうかもしれませんが、実際は違います。

●日本人は元々遅筋の割合が高い民族である

速筋と遅筋の割合に関する話として、日本人は平均的に遅筋の割合が高い民族と言われています。具体的には速筋が30%程度なのに対して遅筋は何と70%程度もあるとされているのです。すなわちこの速筋と遅筋の割合だけを考えれば、日本人は「生まれながらにして長時間の有酸素運動を行うような競技に向いている」という事が分かります。特にこの70%という数字は非常に高い数字であり、日本人のほとんどがマラソンランナーになる事ができる素質(持久力は血管、ミトコンドリア、肺や心臓の大きさ・強さ、酸素を取り込む能力、走るための技術など様々な要素が関係しており、それとはまた別の話)を持っているという事になります。

ただしその素質に自分で気づく事ができる人はほとんどいません。何故なら我々のような一般人では「遅筋の割合が影響するほどにまで自分を追い込む」必要がないからです。つまり遅筋のような「持久力を決める様々な要素」が影響するほどにまで自分を追い込んでいなければ、そもそも「自分が長距離走に向いていない」などと考える必要が全くないのです。特にダイエットをする際には「私は長距離走に向いていない」というような事を運動をしない事の理由にしてしまう人は多いですが、それは単なる言い訳に過ぎません。

また遅筋の割合は高いほど、長時間の運動をしても疲れにくく脂肪は燃えやすくなります。前述のように遅筋は脂肪をエネルギーにして機能する筋肉なので、遅筋がしっかり機能していればそれだけで勝手に脂肪が燃え、新たに脂肪が蓄積する事も抑えられます。つまり遅筋の割合を気にするのであれば、そもそも日本人の時点で有酸素運動に向いているはずなので、「有酸素運動を避ける」のはやはり言い訳にしかなっていないと言えると思います。

●逆に欧米人は速筋の割合が高く、鍛えるほどその差は大きくなる

陸上競技の一つである100m走の決勝においては、現在ほぼ全ての選手が9秒台で走っており、日本人はそのスタートラインに立つ事すらできていません。あの舞台で走る事ができる海外の選手では、その速筋の割合が80%以上とも言われており、その割合を考えれば、生まれながらにして短距離走などの瞬発的な力を要する競技に向いているという事が言えます。逆に日本人選手が未だに9秒台で走る事ができないのは、前述した通りいくら体を鍛えても元々の速筋や遅筋の割合を変える事ができないからです。特に速筋は鍛えれば鍛えるほど太く大きくする事ができるため、生まれつきの速筋の割合による差は、鍛えれば鍛えるほど見た目でも分かるほど大きな差として現れます。例えば速筋の割合が30%しかない人と80%もある人が同じペースで同じだけの筋トレをした場合、当然80%の人の方が筋肉は太く大きく鍛える事ができます。スタートラインの時点で際立って日本人の体が細く見えるのもその事があるからです。

しかしながら例えそのような瞬発的なスポーツであっても、速筋の割合や筋肉の大きさだけで全てが決まる訳ではありません。何故なら「速筋の割合が高い=筋力トレーニングの結果が出やすい」というだけであり、そもそも速筋の割合が影響するほどにまで自分を追い込んでいなければ意味がないからです。また走る競技では「速く走るための技術」も当然必要であり、例えば4×100mリレー(リオオリンピックにて銀メダル)のように、技術次第では例え速筋の割合が低くても十分世界と戦う事が可能です。よってこれについても、我々のような一般人が「速筋の割合が低いからそういうスポーツに向いていない」などと考える必要は全くありません。それは単なる「運動をしたくない事の言い訳」に過ぎないのです。


★「運動神経が良い」「運動神経が悪い」について

●「運動神経」とは?

「運動神経」というのは実際に体にある神経の事で、体を動かす際に使われる神経の総称です。脳から出された命令は電気信号として神経を通って全身に伝わります。それが最終的に筋肉に伝わる事でその筋肉を自分が動かしたいように動かす事ができるのです。ただ、一口に運動神経と言っても筋肉を動かすためだけに使われている訳ではなく、実は内臓のように「意識せずに動かさなければならない筋肉(心臓は心筋、胃腸などその他の臓器では平滑筋)」を動かす際にも使われています。例えば怒ったり緊張したりした時に胃腸の活動が弱くなったりする事があるかと思いますが、何故そのような事が起こるのかというと状況に応じて脳がコントロールしているからです。「運動神経」と聞くと「自分の意志で筋肉を動かす」時にだけ使われるように思ってしまいますが、そのように内臓の機能を調節するのも運動神経の役割の一つです。

これを踏まえて「運動神経が良い」という言葉の意味を考えてみると、「運動神経が良い」という言葉を使う際には大抵「どんなスポーツでもそつなくこなせる事ができる」という意味で使われます。簡単に言えば「スポーツ万能」という事です。しかしスポーツが万能な人というのは最初から万能という訳ではありません。必ずスポーツが万能になるまでの過程というのが存在します。まずスポーツを行う際には「瞬間的に起こった事に対して素早く反応する」必要があり、そもそも脳からの命令がスムーズに行われなければ素早く体を動かす事はできません。よってスポーツ万能というのは実際にある「筋肉を動かすための運動神経の良し悪し」というよりも「脳の記憶の問題」と言えます。すなわちその運動をする際「どのように体を動かせば良いか」をあらかじめ知っているという事です。「スポーツ万能」「運動神経が良い」と呼ばれる人たちは人に見せる前からそのような場面に遭遇したり、そのような映像を見ていて脳が体の動かし方を想像・記憶しているのです。だからこそ今までした事がないような動作であっても瞬時に体を動かす事ができるのです。

次に、その脳から出された命令は神経を通って体の隅々まで伝えられます。よって自分の意志通りに筋肉をすばやく動かすためには「脳の命令がスムーズに伝わるような運動神経」がどうしても必要になります。これは「神経の質」なので、瞬発的な力を発揮する運動ほど「生まれながらの素質」が大きく影響しますが、実は神経は鍛える事ができ、使い込む事によって次第に脳からの命令をスムーズに伝える事ができるようになっていきます。例えば高齢者が指先を使うトレーニングを行った事で脳や指先の神経が活性化し、ボケが改善されたというような事をよく聞きますが、あれと同じです。その意味では「脳」も「運動神経」も、年齢に関係なく鍛える事ができる訳です。

更に「どんな複雑な運動もそつなくこなす」という事は「脳からの命令を伝える神経が細かく枝分かれしている」事が重要になります。これは特に神経系が発達する幼少期(下記)において、どれだけ「多種多様」「複雑」な運動を行ったかによって大きく変わります。すなわち小さい頃からの継続した運動習慣が将来の「運動神経が良い」「スポーツ万能」に繋がっているという事です。ちなみに運動を行うための中枢である脳や脊髄(首~腰まで)は一度損傷するとその機能が失われ、全身麻痺や半身麻痺、感覚麻痺などが残ってしまいますが、そこから離れた指先などの抹消神経は一度切れても時間をかけて再生させる事ができます。これは余談になりますが、例えば足の動脈(血管)が詰まってしまった際には、詰まった箇所の手前から血管が枝分かれし別のルートで動脈に繋がるよう伸びていく事があるそうです。人間の体って凄いですね。

●運動神経は生まれつきだけで決まる訳ではない

確かに運動神経には生まれながらの素質が少なからず関係しますが、上記のように運動神経の良し悪しというのは「神経系が発達する期間からどれだけ神経を使ったきたか」によって大きく変わります。この「神経系が発達する」期間はよく「ゴールデンエイジ」と呼ばれています。ゴールデンエイジは具体的には「3歳~12歳」の間とされており、この3歳~12歳という期間は特に猛烈な勢いで神経系が発達します。将来「天才」と呼ばれるようなスポーツ選手はこの時期から運動を続け、神経を使い込んできたのです。もちろんゴールデンエイジが終わった後も前述のように神経は使えば使うほど鍛える事ができますが、この期間ほど速いスピードでの発達はありません。よってこの期間にどれだけ神経を使うかは、将来の選択肢にも大きな影響を与える事になります。

更に神経系の発達という事で、この期間から勉強を継続して脳を使う事でも神経系を発達させる事ができます。いわゆる「天才頭脳」と呼ばれるような人たちは、このゴールデンエイジの期間やそれ以前からたくさんの本を読み、たくさんの勉強をしてきたのです。このように将来スポーツ選手を目指す場合に限らず、技術者、学者、研究者などを目指す場合にも、この期間にどれだけ神経を発達させるかというのが非常に重要になります。

●運動神経を「生まれつき」「遺伝」だけで終わらせない

それを踏まえて改めて考えてみると、よく「うちの子は運動が苦手だから」「うちの子は馬鹿だから」と言うような親がいますが、それは単に「親の教育力がない(命令や指示をするだけなら例え親でなくてもできる)」という事の裏付けと言えると思います。「神経系を鍛えるような教育」は「親の命令や指示による詰め込み」ではできません。神経系を鍛えるためには「子どもが自発的に神経系を鍛えるための教育」、すなわち「子ども自身に考えさせる」事が重要です。例えばスポーツの上達のスピードを上げるためには「人に教わっている時だけ一生懸命努力する」のではなく、「例え誰も見ていない所でも自ら努力し続ける」「ボールを触っていなくても努力する」事が必要不可欠なのです。子育てをする上では親にも得意・不得意があるかと思いますが、どんな親であってもそのように「親が見ていない所でも子どもが自ら進んで努力するような教育」を行うべきです。

またそういう意味ではいくら両親が「運動神経が良い」場合でも、その子どもも「運動神経が良くなる」とは限りません。例えばスポーツ選手の子どもがスポーツ選手になるとは限りませんし、スポーツが苦手な両親の子どもでも逆にスポーツ選手になる事だってあり得ますよね。それと同じです。要はゴールデンエイジやそれ以前からの積み重ねが重要なのです。どこかの漫画にあるような言葉ですが、何もせずに諦めてしまったらそこで終わりなのです。

●使える筋肉と使えない筋肉

実際のスポーツでは多種多様な状況の中で、瞬時にかつ複雑に筋肉を動かさなければならず、それを行うためには助走などむしろ反動を上手く利用して無駄なく力を発揮します。何故ならその方が体力をできるだけ温存しながら、試合終盤まで高いパフォーマンスを発揮し続ける事ができるからです。一方、通常の筋トレでは「特定の筋肉に効かせるような力の入れ方」をし、またできるだけ反動を使わず静止した状態から筋力を発揮させます。つまりあえて筋肉を消耗させるように力を入れる訳で、そのような体の動かし方は実際のスポーツには不向きです。これが「重たいウエイトを使って鍛えたトレーニングはスポーツなどでは役に立たない=使えない筋肉」として、ウエイトトレーニングが敬遠される大きな理由になっています。

しかしウエイトトレーニングをして筋力が上がると、その筋力に頼った力任せのプレースタイルに変化する選手はプロでも多いです。それにより負担が増えるようなフォームになったり、関節や筋肉への負担を考えず無理に体を動かしたり、ウエイトトレーニング時のようにあえて筋肉を消耗させる体の使い方をしたり、疲労が蓄積しているのに筋トレを続けたり等をしてしまいます。つまり体を鍛える事でむしろ怪我に繋がりやすくなり、それが「ウエイトトレーニング=体を酷使する=体が固くなる(ボディビルダーのように大きく発達させれば可動域は制限される)=怪我をしやすい」というイメージも定着させているのです。しかしこれは技術とか意識的な問題が大きく、決してウエイトを使ったトレーニングだけが原因ではありません。

またウエイトトレーニングで筋肉が大きくなると見た目的にも大きな変化を及ぼすため、特にボディビルダーのように大きく筋肉が発達した人は一般人から見れば「不自然な筋肉のつき方」に見えます。つまりその大きな筋肉はボディビルをするために鍛えたもので、他でその大きな筋力が役に立つ場面が少ない事から、それも「役に立たない=使えない筋肉」と思われる大きな理由になっているのです。しかしこれに関しても、例えば野球選手はサッカー選手のようにサッカーはできませんよね。当たり前の事ですが、それはただ単にサッカーの技術がないだけで、決して筋肉のつき方、筋力の大きさ、鍛え方の問題ではありません。それは一般人にも言え、何もスポーツ等をしておらず大きな筋力が必要ない生活をしている人にとっては、ボディビルダーのように筋肉を鍛える必要がありませんから「大きな筋肉=役に立たない筋肉」に感じます。しかしボディビルダーの人にとってボディビルを行うためには筋肉を鍛える必要がある訳ですから、その人にとっては「役に立つ筋肉」と言えます。

「不自然な筋肉」という言い方をするとすれば人間は皆不自然です。例えば階段を登り降りするための筋肉やその体の使い方は森の中で生活をしていれば必要ありませんし、店頭で売られている天然の野菜だって誰かによって選別されているからこそ並んでいる訳で、「人の手が加わっていないもの」だけを利用して生活するなど今の時代できません。その意味では現代人の殆どが不自然と言える訳です。我々一般人からすればどんなスポーツ選手でもその競技をするために筋肉を鍛えている時点で不自然ですし、ボディビルの中で生きている人からすれば我々のような一般人は不自然に見えると思います。つまり結局のところ、価値観は人それぞれであり、その人にとって筋肉が必要ならば求めれば良いのです。他人がとやかく言う事ではありません。


★「運動」という固定概念を改める

「毎日の運動習慣」と聞くと「運動を行うために時間を作る」と考えがちですが、体を動かす事を全て「運動」と定義すれば、わざわざ時間を作らなくても必ず「運動の機会」はどこかにあるはずです。例えば歩いて通勤・通学を行っていれば、その「歩く」という行動は一つの「運動」であり、毎日それを積み重ねていればそれが立派な「運動習慣」になります。にも関わらず、その運動の積み重ねによる何らかの良い効果が実感できないのは、「体の動かし方」「運動=激しいという誤ったイメージ」に問題があるからです。

これは前述した有酸素運動と無酸素運動、速筋と遅筋の特性を考えると分かりやすいです。改めて簡単にまとめると、無酸素運動は短時間に糖を消費し素早く速筋を動かす運動の事、有酸素運動は遅筋を使って脂肪を少しずつ燃やし長時間続ける運動の事です。すなわち「脂肪を落としたい」「脂肪を増やしたくない」と考えるのであれば、筋肉を素早く動かす運動よりも「筋肉をゆっくりと動かす運動」の方が重要になるのです。これを「歩く」という運動で考えてみると、例えば「足の運びを遅く抑える」「腕をゆっくり大きく振る」「歩幅を大きくする」「意識的に呼吸を行う」「時間をかけて歩く」ようにする事で有酸素運動のような効果が得られ、実はその方が脂肪は燃焼されます。このようにどんな動作も考え方や意識によって「効果的な運動習慣」にする事ができる訳で、その意識一つ一つを積み重ねれば体質も改善させる事ができます。「有酸素運動」に対するイメージと共に、「運動」に対するイメージも改める必要があるでしょう。

これはその他の様々な動作においても言う事ができます。例えば掃除で床に掃除機をかけるとします。普通なら手で持った掃除機を素早く前後に動かしますが、その動かし方だと無酸素運動になってしまい、掃除自体は早く終わりますが疲れて次の家事が続きません。よって「呼吸をしながらゆっくりと大きく」掃除機を動かすように掃除をします。ゆっくりと動かす事では家事などを行う時間は長くなってしまいますが、主に遅筋が使われるので費やした時間ほどは疲れにくくなります。ですので次の行動にすぐ移る事ができ、結果として家事全体の時間は短縮されます。またそのように意識して動作を行えば、今まで無酸素運動のように行っていた掃除を一つの有酸素運動にする事ができます。一度に燃やす事のできる脂肪の量は多くありませんが、それを毎日積み重ねていけば日常的に行っている当たり前の習慣一つ一つが運動習慣になり、それを「体質を改善する機会」にする事ができるのです。

また「運動」と聞くとそのように「体を動かす」というイメージを持つのですが、例えばストレッチのような動きを伴わないものであっても、「筋肉を動かす」という意味では運動と考える事ができると思います。特に日常的に使われている筋肉が「腹筋」と「背筋」です。腹筋や背筋は常に姿勢を維持するために働いている筋肉です。「姿勢を維持する」という言葉だけを聞くと、体を動かしていないので「運動」のようには思えませんが、実際には姿勢を維持するために腹筋や背筋にある「遅筋」が機能しており、姿勢を維持するだけで少しずつ脂肪が燃えているのです。1日中ずっと立っている訳にもいかないので、姿勢の維持だけで1日に燃やす事のできる脂肪の量は多くありませんが、意識的に行って毎日積み重ねていけばそれも「運動習慣」になり得ます。

このように、体を動かす運動も動かさない運動も全て「運動習慣」にする事ができれば、日常生活をただ過ごすだけで脂肪は勝手に燃えていきますし、筋肉もついてきます。それが「脂肪が溜まりにくく燃えやすい体質」なのです。よく有名人で「食べたい物をたくさん食べていて大して運動もしていないのに何故体型が維持できるの?」と疑問に思う事がありますが、そのほとんどはこれで答えが出ると思います。ちなみにですが、上記のような「ゆっくりとした動作で行う筋トレ」の事を特に「スロートレーニング」と言います。スロートレーニングは通常の筋トレをゆっくりとした動作で行い、できるだけ筋肉が緊張した状態を維持しながら曲げ伸ばしをする事になります。それによって遅筋を鍛える事ができるため、上記のような「日常生活における運動習慣」による一つ一つの積み重ねに更に厚みを持たせる事ができます。スロートレーニングは通常の筋トレをただゆっくりと行うだけなので、筋トレに関する多少の知識と自分の体さえあれば誰でもできるのでオススメの方法(筋トレ=ダイエットではない)です。